【インタビュー(全3回)】コンサートプランナーに聞く ─ 最終回 フィリアホールのこれからの役割

スパイスアップのフリーペーパー 2018年春号/Vol.13 から「クラシックとともに」を連載中の 芥川純一 さんは、青葉台駅に隣接する フィリアホール (横浜市青葉区民文化センター)のコンサートプランナー。同ホールでは年間60本近くの主催・共催コンサート・イベントの企画制作に携わっています。

そんな芥川さんに、フィリアホールと地域のつながり、ご自身のクラシック音楽との出会いをお聞きする全3回。最終回は、地域におけるフィリアホールのこれからの役割についてです。

─ 公演プランを組む時はどういうことに心掛けているんですか?

クラシック音楽を取り扱っていると、もともと愛好家向けの企画をどうしても組みたくなるんですが、今はできるだけ「地域に何を還元できるのか」ということを重要視しています。

それが結果的に券売につながるところもありますが、それだけじゃなく、この地域全体の文化を自分がまさに最前線でつくりあげていく、という立場に置かれているという感覚があって、それは楽しいところでもあり、プレッシャーに感じるところもあるんですけれど。

─ 芥川さんは、4年前にフィリアホールへ来る前にも東京と神奈川、そして栃木県の音楽にかかわる職場で働いていらっしゃいますが、他の地域と異なる青葉区の特徴を感じますか?

フィリアホールの設立経緯ともかかわってくると思いますが、このホールは宅地開発に先駆けて、まだ緑区だった頃にオープンしているので、もともと「文化的なもの」が好きで、特に音楽好きな方が移住してきているのでは?と感じます。クラシック音楽の好きな方は目立って多く、中でもヴァイオリンを習っている方は多い印象があります。

そして、意外と独自性みたいなものにある程度愛着を持っているのも特徴だと思います。横浜市の中心部から離れていて、横浜でも東京でもない、という地域環境がそうさせるのかもしれません。きれいな街並みが続き、少し行けば豊かな自然も残っているという独特の環境の中で、自分のライフスタイルを持っている方が多いなという印象です。

─ 確かに独自性みたいなものは好きですね(笑)。そういう地域で、今後どのようにクラシック音楽の文化をつくりあげていくんですか?

私がいま気にかかっているのは、住民の方も入れ替わる、ということです。この先もずっと同じような層の方々が住み続けるとは限りませんから、「今までの方が支持してくださっているから」と安住していると、おそらくだんだん落ちて行ってしまうのではという危機感はあります。

だからこそいまは、いろんなことに挑戦していく時期なのかなと思っています。世間的に子育て世代は郊外よりも便利な都心を好む傾向が増えているようで、こちらから何も発信しなければ、魅力のないエリアになってしまいますから。

それに、フィリアホールに長年足を運んでくださっていても、たとえば脚が悪くなって来られなくなったなどという高齢の方もいらっしゃいます。そういう方のもとへ、今度はこちらから出向いていく必要性があるのでは、と。一緒に地域連携に取り組んでいる中島直子さんとは、アウトリーチ(地域社会での出張コンサート)企画として、アーティスト派遣を増やしていこうとしています。まずは地区センターや地域ケアプラザを中心に現在は企画していますが、今後は病院や福祉施設へも出向いていきたいですね。

─ 具体的に、たとえばどのような取り組みがありますか。また、派遣するアーティストはどんな方ですか?

3月に開催したチャリティコンサート「あおばカノン2018」は、区内の全ケアプラザと共催し、ケアプラザに拠点に活動しているアーティストをご紹介いただきました。出演者の方々からは「フィリアホールでの演奏は初めてで、こういう披露の場をもらえてありがたい」という声をいただきましたし、フィリアホールの音響の良さを知っていただいたことで、今後の公演にもつながればと期待しています。

また一方では、フィリアホールでは世界レベルのアーティストも多数公演しているので、そういった方々にもご協力いただき、アウトリーチには有名な方を必ず何人か入れるようにしています。過去にもリコーダーの女王ミカラ・ペトリや、仲道郁代さんなどもお送りいたしました。

学校へのアーティスト派遣でも、やはりその点は期待されていて、「学校からの直接の交渉では呼べない人をフィリアのつながりを生かして呼んで欲しい」という需要の多さを肌で感じています。

─ 地元の学校へもアーティストを派遣しているんですね。

昨年は4つの小学校へプログラムを提供しました。今年面白かったのは、ミュージカル女優の方を招いたプログラムです。ちょうどその学校では創作ミュージカルの発表を控えていて、その方に3日間、講師役をお願いしました。他にも、若い打楽器奏者二人を派遣したプログラムでは、持ち寄った身近なもので音を出すワークショップや、珍しい打楽器を使ったミニコンサートを3日かけて行ないました。

─ それは面白そう。まちのいたるところに音楽があふれるのは素敵ですね。スパイスアップの仲間にも音楽をやっている人はけっこういますし、これからいろいろ絡んで一緒に青葉区の地域課題に取り組んでいければと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

【インタビュー(全3回)】コンサートプランナーに聞く
第1回 クラシック音楽×地域
第2回 クラシック音楽との出会い
柏木 由美子

かしわぎゆみこ(編集長)
システムエンジニアを経て技術書籍や企業Webサイトの制作に従事。その後フリーランスに転向し、現在は兼業主婦としてIT企業を中心に取材・執筆を行う。地域活動として現在、通所介護(デイサービス)でのボランティアや、身近な自然をフィールドとしたイベントを企画運営する「かわもりあおば」、および定年退職後の地域参加をサポートする 「ボーイズクラブ」に参加。


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