スパイスアップのフリーペーパー 2018年春号/Vol.13 から「クラシックとともに」を連載中の 芥川純一 さんは、青葉台駅に隣接する フィリアホール (横浜市青葉区民文化センター)のコンサートプランナー。同ホールでは年間60本近くの主催・共催コンサート・イベントの企画制作に携わっています。

そんな芥川さんに、フィリアホールと地域のつながり、ご自身のクラシック音楽との出会いをお聞きする全3回。第2回は、芥川さんのクラシック音楽との出会いについてです。

─ 芥川さんは相当なクラシック好きですよね。小さい頃からですか?

 音楽は好きでしたが、クラシックにそこまで興味があったかというと…。実は小学校まで、ピアノの習い事が一番嫌いでした。先生が厳しくて(笑)。

 ただ、そのピアノの先生から、小6の最後にとても難しい曲が課題として出されたんです。ショパンの「ワルツ第7番嬰ハ短調 op.64-2」です。「クラシック音楽をちゃんと聴いてみなさい」と言われて初めてちゃんと聴いたら、すごくいい曲で。そのときの録音もはっきり覚えています。マリア・ジョアン・ピリス という巨匠ピアニストの録音でした。そのとき、「こういう世界があるのか!」と知ったのが最初の一歩でした。

 以来、ピアノを弾くことは好きになりましたが、それでも普段聴くのはもっぱら流行のJ-popでした。しかし中2になると、周りの友達と違うものを聴きたくなったんですね(笑)。当時、家にあってたまたま聴いたオーケストラのCDで、ストラヴィンスキー 作曲の「春の祭典」を聴いたんです。あれはいわゆる「クラシック音楽」というものとは全然違う、すごい曲です。衝撃を受けました。それからオーケストラを聴くことにはまりました。

─ 吹奏楽部には入らなかったんですか?

 中学ではテニス部だったんですが、いわゆる幽霊部員でした。2年のときに辞めて、ちょうどどうしようかと思っていたのですが…中3に上がったとき、当時の吹奏楽部の顧問から「ピアノのパートが難しいコンクール曲があるから、その演奏だけでいいから入って欲しい」と言われて入部しました。

 その頃の ピアノはもっぱら独学 です。課題として出されるのは面白くないと思ってしまって(笑)。むしろ、習っていたときよりも練習していたかもしれません。とにかくいろんな曲を聴きました。好きな曲を自分から探しに行くようにもなって、楽器店で楽譜をあさっていました。

─ 小6で本物のクラシックに出会い、中2でオーケストラにはまり、あとは自分からどんどん惹きこまれていったと(笑)。

 高校で、改めてクラリネットパートで入った吹奏楽部は、大編成部門で東関東大会へも行くような大きな部で、私もけっこう熱中していました。その頃から、どんな仕事に就くかまではイメージできていなかったものの、漠然と「音楽業界に就職できたらいいなあ」と思うようになっていました。

 それでも最初に入った大学では経済学部を選んだんです。音楽は音楽で好きでしたが、仕事は仕事で堅実にいかないと、という感覚があって。ちょっとした妥協もありました。でも結局面白くなくなって、「これはもう音楽で生きていくしかないな」と。

 それで、慶應義塾大学文学部の美学美術史専攻に入りなおしました。一般大学の中では音楽の研究分野が伝統的に強い大学でしたし、専門的に教えている先生がいらっしゃったので。私はその中の 音楽学 というゼミで音楽の歴史やアートマネジメントを学びました。

芥川さんがフリーペーパースパイスアップで連載中のコラムの第一回は「『生きるための音楽』とは」
(イラスト:ヒラカキ、デザイン、佐藤慎治)

─ 実は先日、日本体育大学でスポーツマネジメント学部の学生さんに会ってきたんですが、今年新設の学部だそうです。そのものの価値を広められるビジネスの担い手は、いろんな分野で求められているのかもしれませんね。

 そうですね。最近は、アーティストとは別に マネジメント人材を育成する大学 が増えています。日本は優秀なアーティストを輩出していても、アーティストとその演奏を聴く方々をつなぐ役割の人財や、彼らを地域とつないだりするようなマネジメントができる人材がすごく少ないということは昔から言われていました。

 以前は、専門的にマネジメントを学べる場は少なくて、たとえば音楽事務所やレコード会社、劇場など現場に入って仕事で身に付けるほうが圧倒的に多かったと思われますが、今では仕事に就く前に体系的に学問として学ぶことでもう少しレベルの高いマネジメントができるのでは、と期待されているのだと思います。

─ アートマネジメントの授業ではどんなことを学んだんですか?

 基本的には机上の勉強も多いのですが、一方で コンサートの制作体験 に近い現場の仕事のことも学びますし、「チラシというものはこうやってつくるんだ」みたいなことも学びました。また、クラシックコンサートにもいろんなパターンがあり、「こういうお客様に聴いてもらうものならこういうプログラムにしたほうがいい」といったことも学びました。必ずしも今の現場でそのすべてを生かせているとは断言できませんが、確実に身にはなったと思います。

─ 実際にマネジメントする現場で働いてみて、どうですか?

 楽しい面もありますし、やはり予想通りの大変さもあります。ただ、一番大変で、かつすごく興味深いのは、「地域・社会そして世界に何をこちらが提供できるか」を考えていくことですね。私の仕事で一番重要なことだと思っています。

─ フィリアホールと地域をどう結び付けようとしているのか、ぜひ聞きたいです!

【インタビュー(全3回)】コンサートプランナーに聞く
第1回 クラシック音楽×地域
最終回 フィリアホールのこれからの役割

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