微生物分解競争レポート

SOZAi循環Labを運営する「スパイスアップ」は、2021年、三菱ケミカル様の「青葉台リビングラボ」と「微生物分解競争」企画を実施。本企画は、翌2022年にスタートするSOZAi循環Labプロジェクトの足がかりとなりました。

本企画のきっかけは、三菱ケミカル様が生分解性プラスチック「BioPBS™」を開発したと知ったことです。自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に分解される素材で、しかも耐熱性が高く、ホットドリンク用の紙コップとしての製品化もされているとのこと。スパイスアップで当時立ち上げたばかりの動くローカルメディア「萬駄屋®(よろずだや)」は、出店先で提供するコーヒーの使い捨て容器として、環境負荷の低い素材を探していたところでした。

三菱ケミカル様の研究開発拠点「Science & Innovation Center」がスパイスアップと同じ横浜市青葉区にあることから、私たちは同社の「青葉台リビングラボ」様を訪問。萬駄屋にBioPBS™紙コップをご提供いただけることになりました。

しかし資源循環するには分解処理を行なう環境が必要です。当時のネット上では答えを見つけられなかったので、青葉台リビングラボさんにお聞きすると、温度だけでなく、PBSを好む菌の量によっても分解速度が変わってくるとのことでした。

そこで、「私たちが使用する土を持っていくので分解速度をシミュレーションしてもらえませんか?」と相談したところ、「数カ所の土を採取して比較してみませんか?」というご提案をいただき、「微生物分解競争」として企画が始動しました。

採取場所は、以下の青葉区内5カ所です。


採取した土は、それぞれに特徴がありました。

・すすき野団地の花壇:粘土質
・山内図書館の花壇:園芸土
・鴨志田緑小学校の校庭:砂っぽい
・里のengawaの堆肥場:樹皮を含む
・鈴木清友農園の堆肥場:発酵中の牛ふん

2か月間のテストの後、微生物分解競争の結果は、2021年12月17日にスプラス青葉台で開催した「未来青葉台会議 vol.11 新たな選択で変化を巻き起こせ。”地域で資源循環”のこれから ~萬駄屋脱炭素化プロジェクト中間報告!新たな共創の可能性を探る~」で、青葉台リビングラボ様から発表されました。

青葉区内で採取した5カ所に、三菱ケミカル様の施設にあるバイオコンポストを加えた6カ所の微生物分解競争の順位は、以下のとおりでした。

1位:鴨志田緑小学校の校庭
2位:山内図書館の花壇
3位:鈴木清友農園の堆肥場
4位:里のengawaの堆肥場
5位:三菱ケミカルのバイオコンポスト
6位:すすき野団地の花壇

砂っぽかった鴨志田緑小学校の校庭の土が1位という意外な結果に(※)。

分解速度のテストに加えて、青葉台リビングラボ様は各所の土に生息する菌も調べてくださったそうです(微生物のDNAを抽出したそう!)。内容は省略しますが、その発表内容を聞いて、科学の力をあらためて感じました。

私たち生活者が紙コップの分解速度を調べるには、実際に土に紙コップを埋めて1年くらい様子を見なければいけませんが、三菱ケミカル様は2週間で結果を出してくださいました。また、理解不能な膨大なデータを分析して特徴をあぶり出す知識と設備を持ち、私たちの目には見えない微生物レベルの可視化も可能です。それまで「土」という“かたまり”で着目していた私たち生活者が、「土壌微生物」に意識を向けるきっかけになりました。

 


※土中の微生物は、採取の位置やタイミング、添加する物等によって変わります。今回の微生物分解競争は、採取場所全体の分解速度や土の良し悪しを競うものではありません。