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【イベントレポート】自分の当たり前をアップデートするシリーズ 4時限目「相談のプロが伝える、職場や家庭・地域・誰でも使える”傾聴”」

「プロはどんな思考をしているのだろう?」
「プロの作品の背景にはどんな知識があるのだろう?」
「どんなプロセスで仕事をしているのだろう?」

スパイスアップ編集部のメンバーを中心にした、自らのセンスを磨く知識集積のためのシリーズです。

メンバーのほか、福祉事業所で働き始めた方々も参加してくださり、私たちが拠点とする寺家ふるさと村「里のengawa」のハナレとオンラインのハイブリッド方式で開催しました。

今回のゲストは、NPO法人 アントワープカウンセリングオフィス の小柳直晴さん。社会福祉士・介護福祉士でもある小柳さんは、障害者福祉施設で勤務した後、2015年から2022年までは相談員として「あおば地域活動ホームすてっぷ」で働いていらっしゃいました。

相談員の仕事には3つのフェーズがあるそうです。

1つ目は、障害のある方やご家族から相談を受けて解決方法を考えるフェーズ。本人の希望や目標を確認して、既存のサービスに当てはまるかを検討するために話を聞き取らなければいけません。

2つ目は、解決が難しい問題を「地域課題」としてみんなで考えるフェーズ。考える場を持つには、普段から横のつながりや地域の仲間を作っておく必要があります。小柳さんは、スパイスアップ編集部が2020年まで発行していたフリーペーパーをその仲間づくりの情報源の1つとして活用してくださっていたそうです。

そして3つ目は、地域で解決が難しい場合は行政へ働きかけるフェーズ。ここでは全体の熱量を上げることも必要になるそうです。

こうして当事者のことを知り、現状を確認し、対処方法を考えるだけでなく、繰り返さないためにはどうすればいいかを考えたり、さらに同じように困った人がいないかといった、地域や社会にまで広げて考えることもするそうです。

小柳さんが作成した「相談の仕事」のロジカルマップ

こうした相談員の様々な活動シーンで必要となるのが「傾聴技術」です。

「傾聴を意識することで世界観が広がりますよ」と小柳さん。

傾聴技術には、視線を合わせたり、うなづいたりして、相手に「あなたの話を聴いていますよ」と感じてもらうことに加えて、相手の言うことを要約したり、感情的な表現を注意深く聞き取って受け止めたりする技術も必要です。

この日は、少しの時間でしたが、参加者がペアになって相談者と相談員をシミュレーションする時間を設けました。皆さん、ちょっと意識することで、相手の話を聞く態度が変わることを実感できたようです。傾聴はあくまで「技術」なので、トレーニングすることで誰でも習得できるもの。これからも日常生活で意識していきましょう!


 

相談員として務めていた小柳さんは、「障害者は情報をアウトプットするのが苦手だけれど、頭の中で考えていることやインプットする力は一緒」とおっしゃいます。旅行に行ったり、おいしいものを食べたり、アイドルを応援したり、学んだり。みんなそれぞれにやりたいことがあります。

小柳さんのお話をうかがって、私たちも「傾聴」を広くとらえ、地域のいろいろな方の声に耳を傾け、よりよくしていく行動につなげていければいいなとも感じました。

2時間という短い時間でしたが、自らの“枠”を外し、自分とは分野の異なるプロの話を聞いて自分の常識をアップデートしていく。── 参加者一人ひとりのそんな機会をこれからもつくっていきます。

ABOUT ME
柏木由美子
システムエンジニアを経てIT関連の編集・執筆に従事後、フリーランス。現在はプロボノ活動でキャリアと暮らしを地元へシフト中。地域の異分野協働を通じた新しい価値創造を目指し、「スパイスアップ編集部」を軸に「かわもりあおば」「ボーイズクラブ」「日本体育大学女子サッカー部&日体大SMG横浜 オフィシャルサポーターズクラブBLUES事務局」「まちの相談所ネットワーク」等で活動。まちづくり・福祉分野の取材にも取り組む。