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キッチンカーで地域の課題解決と経済循環を目指す2年目がスタート ─ 「SPEAK UP!交流会」を終えて

活動基盤をフリーペーパー(紙のメディア)からキッチンカー(動くメディア)に変え、移動販売を通じた新しい共有と循環のかたちを目指す2年目がスタート。スパイスアップ編集部の第8期のスタートでもあります。2022年5月12日、メンバーと企業パートナー、スパイスアッパーズ(サポーター)が集まり、スパイスアップの今後の事業展開について話し合いました。


「コンレマーニ」さんのお弁当で腹ごしらえをした後のアイスブレイクは、メンバーが朝採りしてきたタケノコを持ちながら喋るという風変わりな自己紹介&質問タイム 笑。普段よく顔を合わせていても、それぞれのバックグラウンドまで話す機会はほとんどなく、初めて知ることもたくさんあって盛り上がりました。

(タケノコをトークのバトン代わりにするなんて、このヒトしか思いつかない)
(奈良町のクラフトカフェ「コンレマーニ」さんに届けていただいたお弁当)

フリーペーパーとキッチンカー、目的は同じ。しかし。

その後、改めて「スパイスアップ編集部とは?」の共有。

2020年まで、狭くて小さいエリアの情報を届けていたフリーペーパー「スパイスアップ」では、まちにはいろんな人、いろんな仕事、いろんな考え方、いろんな事情があることを発信しようと、多種多様な活動を取り上げてきました。その結果、スパイスアップ編集部は営利・非営利、子供・大人、障害者・健常者といった線引のない、幅広い層とのつながりができ、彼らをつなぐ活動へと発展してきました。

(寺家町「里のengawa」のハナレにて)

キッチンカー「萬駄屋」も目的はまったく同じです。でもやり方が違うんですね。

  • メディアが、紙から動産(キッチンカー)へ。
  • 発信方法が、取材・執筆からSNS・言いふらしへ。
  • 担い手が、クリエイターから事業者・生活者へ。
  • 活動資金源が、広告からリテールへ。

キッチンカーに変えたことによる一番の効果は、担い手が多様化したことです。それは、活動フィールドが増えたことと、活動の成果としての商品やサービスを披露する「出口」がつくれるようになったことに加えて、わずかですがお金がまわるようになったことが大きいと考えています(とはいえ、まだまだ現場は有償ボランティアレベルで、限界利益率を高める新しい施策が今後必要です)。

その一方で、キッチンカーそのものの運用の難しさ ─固定費と食品衛生のどっちも─ があります。思っていた以上に複雑だった、というのが正直なところ。でも一年間メンバーとさんざん試行錯誤したおかげで、コツのようなものも掴めてきました。

(メンバーの背中のすぐ後ろで、ひよこも座り込んで私たちの話を聞いていた)

そしてもう一点は、「ローカルコミュニケーションのツールとしてのキッチンカー活用」という概念に、まだ周囲が慣れていないことです。今回の交流会でも話題にのぼりました。

「スパイスアップ編集部がキッチンカーを始めた」と聞いて、単純に物売りとして来て欲しい、と言われるわけですが、「無用の用」を地で行く萬駄屋は、普通のキッチンカーのようにガチな料理を提供するわけでもなく、スーパーの移動販売車のように生活必需品を売るわけでもなく。

いまはその都度丁寧に説明してまわっていますが、メディアとしての萬駄屋のローカルインパクトを高め、それを訴求していくことが必要。この一年間の活動を通じて、「萬駄屋の使い方」をわかってくれる人やお店は出てきたので、そういった方々との協業を通して取り組んでいければと考えています。

(スパイスアップの活動は「答えのないゲーム」。だから面白い)

スパイスアップへの貢献はいらない

「使い方」という点では、スパイスアップ編集部のメンバーにもっともっとスパイスアップを使ってもらう、というのも今年度の重要なテーマの一つです。

「スパイスアップ編集部に貢献したい、役に立ちたい」と言ってくれる人がいますが、スパイスアップ編集部はそれを望んでいません。自分の仕事や活動に使ってくれたほうがよっぽどうれしいんです。フリーペーパーの時代も、取材先の活動を多くの人に知ってもらいたい、取り上げられたことをよかったと思ってもらいたい、と活動してきました。

矢印をスパイスアップ編集部の内部でなく自分や周囲に向けて欲しい。そうすることで自分の仕事や活動をドライブし、地域を元気にし、面白くし、巡りめぐってスパイスアップ編集部にとってハッピーなことになると思っています。

(ゆるやかなネットワークにちょうどいい空間)

この日は、スパイスアップ編集部に関わって自分の仕事や活動にどんな変化があったかについても何人かに話してもらいました。

「え、そういう使い方でもいいの?」と思った人もいたかも。いいんです!どんどん使ってくれれば。それが、スパイスアップ編集部が2015年から地元だけで小さく活動してきたことの成果です。

これからの働き方の指針に

「スパイスアップ編集部を使う」という言葉の中には、「メンバー同士の使い合い」も含まれています。困った時に相談できる人が身近にいることは大きな武器です。use というよりも utilize。いろんなスキルを持っているメンバーが揃っているからこそ、大いに使い合って、お互いに高めあっていけるといい。

スパイスアップ編集部のメンバーは、複数の仕事をしていたり、仕事とボランティアを両立させていたり、思い切った転職をしていたり、きっとこれからの主流になる働き方をしている人たちばかりです。個で働きながら、必要に応じてつながるには絶好の環境です。そしてそれはきっと、生活や趣味にもつながっていきます。

(撮ってくれたアレックスの笑顔の引き出し方が上手で感謝)

働き方が多様化し、おそらく地域とのつながりがより求められていく社会で、これからの働き方、生き方を、メンバーが体現していけるのではと思っています。

スパイスアップ編集部2022

スパイスアップ編集部では今年度、下記のプロジェクトおよび運営を行なっていく予定です。

<プロジェクト>

  • 萬駄屋:地元商品を販売しながら、複数の小さなプロジェクトを同時進行し、地域資本を共有・循環していく動くローカルメディア活動
  • まちの編集会議:月に1回、特定のテーマを話し合って新しいプロジェクトにつなげるオンラインミーティング
  • のんびりデスク:萬駄屋@すすき野団地で開催するよろず相談所
  • 絵本の読み聞かせ:萬駄屋@山内図書館で開催する大人向け・子供向けの読み聞かせ
  • インスタライブ:スパイスアップ編集部ゆかりの場所から、人々の活動を紹介するmonthlyライブ
  • ○○の世界シリーズ:地域のプロを招き、各自のセンスを磨く知識集積のためのセミナー
  • まちの活動紹介プロジェクト:ドレッセWISEたまプラーザエリアマネジメンツのエリマネ活動への参加
  • リビングラボ:民学産公連携を目指した、住民主導型のリビングラボの運営
  • コミュニティブレンダーWG:持続可能な地域コミュニティのあり方の研究

<運営>

  • はみだしスパイス:メンバー・企業パートナー・スパイスアッパーズ向けに、メンバーおよびスパイスアップ編集部の活動予定やコラムを配信する会員限定のmonthlyメルマガ
  • 企業パートナー活動報告:2カ月に1回、各企業パートナーとのプロジェクト進捗のWeb報告
  • 戦略室会議:月に1回、コアメンバーが集まってスパイスアップ編集部の運営やプロジェクトの課題を共有し解決策を検討する会議

しなやかなメンバーたち、そして地元の皆さんとともに。

(手前が散らかり過ぎてた 汗)
ABOUT ME
柏木由美子
システムエンジニアを経てIT関連の編集・執筆に従事後、フリーランス。現在はプロボノ活動でキャリアと暮らしを地元へシフト中。地域の異分野協働を通じた新しい価値創造を目指し、「スパイスアップ編集部」を軸に「かわもりあおば」「ボーイズクラブ」「日本体育大学女子サッカー部&日体大SMG横浜 オフィシャルサポーターズクラブBLUES事務局」「まちの相談所ネットワーク」等で活動。まちづくり・福祉分野の取材にも取り組む。