【人物図鑑 20】古屋 修さん ─ 変化する時代の中、平常心でお客様を温めるカフェオーナー

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FLUFFY DAYS

◆共存できる場所

東急田園都市線江田駅にほど近いカフェスプリング。赤い陽よけと、グリーンにペイントされた木枠のガラス窓が、街並みに映えています。

インタビューにうかがった日はいいお天気で、テーブルはいつものセッティングよりも間隔が空いていましたが満席です。勉強の場所として、買い物の帰り、犬のお散歩途中に休憩など、カフェを必要とする人が入れ替わり立ち替り立ち寄ります。

今回ご登場いただくのは、中国料理o8番地 の中村卓司さんから「尊敬できるすごい方なんです」とご紹介いただいた、カフェスプリングのオーナー・古屋修(ふるやおさむ)さんです。

カフェスプリングは、スパイスアップメンバーが編集会議に集まる場所でもあり、5年前にスパイスアップ創刊記念パーティーを開催した会場でもあります。そんなご縁のあるカフェのオーナーである古屋さんにインタビューできる機会がやっと巡ってきました。中村さん、ありがとうございます。

<ふっくらトローリ・・・・。間違いないオムライス>

「契約養鶏場の平飼い鶏の卵を使用しているので、とっても濃厚なんですよ」。

なるほど!ふっくらと厚みのあるオムライスには、たっぷりトマトソースがかかっています。パスタ、ボリュームたっぷりの海老アボカドサンド、野菜が色鮮やかに添えられたカレーなどの食事メニューだけでなく、スイーツも充実しています。定番のシフォンケーキやスコーン、私のお気に入りは自家製のジンジャエールで、辛味・爽やかさ共にパンチのある味は格別なのです。

◆自主性を重んじる

お店をオープンしたのは2005年9月。当時の江田駅前には現在ほど飲食店は無く、このおしゃれな雰囲気のカフェが近隣住民の憩いの場になるのに時間はかかりませんでした。

しかし現在までの15年間には、リーマンショック・震災・そして今回の新型コロナウィルス。こんなに簡単に並べるのは胸が苦しくなるような事態に遭遇しています。経営面でもプレッシャーは大きく、苦難の連続だったのではないでしょうか?いまや避けて通れないこの質問に、

「うーん。た、大変でしたよ。でも、皆様に支えられて続けることができました。笑顔でお帰りになるお客様を見ると、大変だったことなど、全てが吹き飛びますね」。

「自分一人では何もできませんし、若いスタッフがメニューもSNSでの告知の仕方も色々と考えてくれます。メニューの開発や情報の発信など、好きなことを生かして工夫してくれるスタッフに恵まれているんです」。

全く苦労話にはならず、スタッフの方々と創ってきた今までの取り組みを穏やかに話す古屋さんの様子から、お互いの信頼感が噛み合っていることが伝わってきます。ゆっくりと土壌が作られてきた、その安定感がお店の雰囲気に反映されています。

◆ブームとタイミング

建築業界の会社に勤務していた時期を経て、カフェに興味があった古屋さんは、一人でもふらっとビールを飲みに立ち寄ることができるカフェを作りたいと考えていました。2004年4月、カフェの視察を兼ねたオーストラリアへの家族旅行では、現地在住のご友人の案内でゲストハウス付きのカフェへ、そして7年前に訪れたスリランカへと、海外カフェ文化の研究にも余念がありません。

<旅先で訪れたカフェ(古屋さん提供)>

「海外旅行は好きで、どちらかというと暖かい地域のほうが好きですね。そんなにたくさん旅行しているわけではないんですけれど」。と謙遜気味な古屋さん。見せていただいたお写真には、お子さんと一緒に映るお父さんの顔がありました。

世の中がカフェブームの最中だったこともありますが、なかなか思うような物件が決まらずに難しさを感じていた矢先、現在の物件に出会ったそう。「タイミングなんでしょうねぇ」。

◆店名に込めた想い

「カフェスプリング」と命名したのは、季節『春』の意味であることはもちろん、『温泉』のように癒しの場所になるように。そして、お店に携わるスタッフやそこに集うお客さまも元気になれるように、『バネ』のスプリングの意味も込めたそう。

「オーストラリア視察先のカフェが『Spring』だったこともあるんですけれどね(笑)」。

◆可愛げのない子供?

お姉さまとの2人姉弟。小さい頃は野球、中学高校生時代はハンドボール、大学時代はゴルフ部に所属していました。「ゴルフ部出身といっても、年に一度友人やお客様とラウンドするくらいです」。スポーツマンで筋肉隆々という雰囲気ではありませんが、体幹がしっかりとしている印象を受けるのは、やはりスポーツで鍛えた若い頃がおありなのですね。

「斜に構えた、可愛げのない子供だったと思いますよ」。とてもそんな風には見えませんが、皆と同調して一緒の行動をとるタイプではなかったとすると、状況を冷静に観察し、群れずに自分の取るべき行動をじっと考える、カッコいいタイプだったということですね。

◆いろいろな人がいることの当然

地元の人たちに愛されているカフェスプリング。入り口近くの掲示板には横浜FCの応援ポスターや、お教室生徒募集のポスターが掲示されています。スパイスアップの配布店にもなってくださっています。

「社会的なつながり、拠点になるような場所になるといいですね」。

人が集まる場所には情報も集まり、そこで出会う体験が生活を豊かにします。

本が置かれている一角がありました。これは?

「この建物のオーナーさんの蔵書で、持ってきてくださったんです」。

カフェはゆっくり本を読む場所、本と出会う場所でもありますね。知らなかった人や考えと出会い思考する場所。そこに議論が生まれ、文化がつくられていくのですね。

<「ご自由にお持ち帰り下さい」カフェに置かれた寄贈本>

「一人ひとり、考え方が違いバックボーンも違う。外国でもそうですよね。『違う』ことは当然で、それぞれの考えを尊重することは大切です」。なるほど、そうですよね。古屋さんのカフェは、分かっていてもなかなか実践できていない「あたりまえ」があるということ。皆が平等であることを主張するのではなく、皆が違うことを尊重するベースが大切、ということですね。

生活の中に溶け込んでいて、いい意味での敷居の低さがあり、そこでカッコつけなくていいおおらかさがある。オシャレ感優先のカフェになくて、海外のカフェ文化にあるものは、そういうところでしょうか?古屋さん。

◆そこにいて、静かに街を、人を受け入れる

家族で行くカフェ。駅から家への道すがらに光りが灯るカフェスプリングは、実は我が家の救世主です。

息子が小さい頃、大好きなマルゲリータを食べたいとき、「おかあさん、疲れているでしょう?今日はカフェにしない?」と母を気遣う提案に(笑)、「そうしようか」。主人のOKが出ると、遊び疲れた休日、私の夕飯作りは免除されるのでした。

時は経ち、息子が部活動でトレーニングの休日、「カフェにコーヒー飲みに行こうか?」持て余し気味な夫婦二人の時間、主人が誘ってくれるのは、たいてい息子が帰宅する1時間ほど前でした。淹れたてのコーヒーを飲みながら、駅から友人と談笑しながら帰ってくるサッカーウェアの息子をカフェのガラス窓から手を振ってキャッチ。いつもそこに在るカフェは大切な存在です。

<ゆっくり混ぜて、味と色の変化を楽しむ定番のアイスラテ。これからの季節にぴったり。>

「ごちそうさまでした」。

「大きくなられましたね」。必ずキッチンの奥から出てきて声をかけてくださる古屋さんは、静かに微笑み、地元で暮らす私たち家族の変化を見守ってくださっているように感じます。

友人と過ごすランチは、また別の時間が流れます。いくら話しても話し足りないシンデレラたちはドリンクをおかわりして楽しみ続け、子供たちが家に帰ってくる時間になると日常生活のサイクルへと戻っていきます。すっかり息を吹き返した母たちを笑顔で送り出してくれるのはスタッフの方々です。

取るに足らないけれど、日々起こるプチストレスの中で立ち寄った人々は、温泉(スプリング)に浸かって疲れを癒した時のように、ニュートラル・ゼロに戻ってお店を出るのかもしれません。さりげない、カフェスプリングがもたらす心地よい距離感に癒されています。

家族と、友人と、またフラリと一人で。それぞれリラックスできる場所が「Cafe Spring」なのです。

◆続ける、ということ

静かで優しい語り口、コレを頑張っています、というリキみがない古屋さん。

娘さんや息子さんの世代、若い方に向けたメッセージをいただけませんでしょうか。いつものように、若い方へのメッセージをお願いしました。

「地を足に着けて続けることの大切さを再認識すると色々と見えてくるものがあります。そこからまた、新たな展開があると思います」。

「経済不況、高齢化社会など色々と大変な時代ですが、自分の信じた道を、地に足を着けて続けてほしいと思います。不易流行と言いますが、時代の変化をいい意味で捉えて変えていくことは私も実践するように心がけています。あとは、ある程度の開き直りと言うか、感謝の気持ちを忘れずに人生を楽しんで欲しいと思います。Enjoy your life!」。

<ウィークエンドシトロン、爽やかな味がお気に入りです。平日だって食べたい(笑)>

ふらっと訪れた人も、いつも立ち寄る人も、お腹とココロが充たされて家路へ。江田のカフェスプリングに、クールで自然体、変化する時代においても平常心でお客様を温めるカフェオーナーがいます。

●Cafe Spring
横浜市青葉区荏田北3-2-3
045-915-6345

(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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久保田誉子

久保田誉子

くぼたたかこ(ライター) 婦人服デザイナー、MD、バイヤーとして勤務の後、ファッション業界を目指す学生たちの就職支援に従事。2013年、横浜市青葉区区民企画運営講座「AOBA素敵ウォーキングコレクション」の運営委員となり、企画運営に参加。現在は地域活動の学校・地域コーディネーター、服育講座の講師も務めている。

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