【人物図鑑 17】西山 浩平さん ─ 素材生産者の想いを紡ぎ、トロけさせるショコラティエ

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東急田園都市線青葉台駅前31系統のバスに5分ほど乗車し、ガーデンハウス前のバス停を降りるとSOCORAさんのラボが見えてきました。今回ご登場いただくのは、駒田誠税理士事務所の駒田誠さんからのご紹介、SOCORA bespoke chocolate lab のエグゼクティブチーフ西山浩平(にしやまこうへい)さんです 。

ステンレス製の大きな冷蔵庫とショコラ製作用の機器や作業台はクールな存在感があります。ラボ内は冷んやりとした空気感で、夏らしく海をテーマにしつらわれたテーブルに、白いコックコート姿で物腰柔らかな西山さんが煎れてくださったのは、冷たいとうもろこし茶です。ギラギラ暑い外界の空気から脱出し、ひと息つきました 。

◆ 生産者と直接つながってつくる おいしい宝石

ケースに並べられたボンボンショコラの小さな表面には、素材をイメージするカラーや美しい幾何学模様が描かれ、一粒ひとつぶに存在感を与えています 。

宇治の抹茶・伊勢志摩の青さ・屋久島のタンカン・姫路や金沢八景の青みかんなど、日本全国で妥協のないもの作りをしている生産者さんと西山さんが出逢うことによって特別な一粒になり、産地はカードに紹介されています。

主に企業からの依頼を受けて制作するラボとしてSOCORAをこの地に構えたのは2016年10月15日。その後、近隣の方々から要望を受けて小売り販売を始められたとのこと。大きな看板もなく住宅街に位置し、子供たちが硬貨を握りしめてやってくる場所にもなっています。

「このショーケースは、普通に使う高さよりも低くして、買いに来てくれる子どもたちや椅子に腰掛けた年配の方がよく見えるようにしてあるんです」。

まさに宝石のようなボンボンショコラ。自分のために選んだ一つをここで口に運び、同じ美味しさをもう一つ、プレゼントにして大切に持ち帰る方もいらっしゃるとのこと。「おいしいから食べてみて!◯◯で獲れた材料を使っているんですって」。そんな笑顔の会話が交わされる様子が目に浮かびます。

「時々、駄菓子屋のおじさんかな、と思うこともありますねえ」。

◆ ストレス0%のラボから生まれるもの

今までのお仕事実績から、名だたる有名ホテルよりルームアメニティとしてボンボンショコラのオーダーがあることはもちろん、PAUL&JOEやJIMMY CHOO 、RALPH LAURENなどファッションブランドのレセプションや、東急グループなど、複数の業界からオファーがあります。それはきっと、来場者の味覚を満足させるだけでなく、その場の空間イメージを数段アップさせる仕掛けにも期待しているからでしょう。

(ご本人提供写真)

植物を交えた演出は空間デザイナーをも唸らせる腕前で、先日ホテルニューオータニで開催されたセミナーでは、お花の生け込みを依頼されたほど。ショコラをディスプレイするための木工品などもトータルに創出するパフォーマーです 。

◆ 残さない。― チョコレートを選んだ理由

「チョコレートは、生ゴミが出ないのです。再度溶かして使っていくことができます」。

大学では情報デザインを専攻し、卒業論文の研究テーマは「お菓子と女性」。そして、更なる食の世界への探究心からフランス料理の学びを深め、麻布にあるレストランでパティシエとして仕事をスタートします。

おいしい料理を堪能し、最後に印象に残るデザートの持つ力を意識した西山さんは、お菓子を突き詰めて研鑽を積み、マンダリンオリエンタル東京・製菓部門副料理長として、提供するメニューはもちろん、空間を演出デザインするディスプレイも手がけていらっしゃいました。

製菓学校 上海コルドンブルーで教鞭を執る (ご本人提供写真)

パティシエは、ショコラの形を大きくも小さくも、自在に美しい姿に変化させ、受けとる者はおいしい世界観と幸福な気持ちをその場で堪能します。溶けていく、残らないチョコレートのなんと潔いことか 。

◆ 語る父親の仕事

パティシエであり、製菓学校の先生をなさっている奥様と共に仕事をしながら、9歳の息子さんと2歳の娘さんを育てる父親でもある西山さん。

「子供の送り迎えもしますし、夕飯も作りますよ」。イクメンがもてはやされる時代の中、至極当たり前という雰囲気で力みなくサラッとおっしゃるご様子からすると、日々のお忙しい状況の中でも、きっとテキパキと育児時間を組み入れた時間配分をなさっているのですね 。

<からし&チョコレート> 組み合わせを考え、素材に向き合っていく

現在も海外で勤務されているお父さまが、働いていらっしゃる背中を見る機会がなかった西山さんは、お子さんにご自身の働く姿を見せたいと思われたそう。学校から帰っていらした息子さんには「門前の小僧ではないですが、掃除とか、なんでもさせますよ」。ラボでお手伝いをなさるとか。

◆ 人と繋がるツールとしてのチョコレートの役割

「子供は正直ですからね」。おいしいか、美しいか、楽しいかどうか。「感受性豊かな感覚を持ち、夢がふくらんでいる子供の世代に未来を託したい」と西山さん。

今後、さらにたくさんの類似した情報が溢れる中から、正しい情報を選び取っていかなければならない世代の感覚を養い育てていく時に、日常に触れるベースのクオリティーが高いことは大切なことだと感じています。ボンボンショコラに込められた産地を超えた調和、施された美しいデザイン、癒される味わい。どのような社会背景があって作られているのかも知り、高品質な世界基準を知った上で、色々なジャンクなことごとを楽しむ大人に育つことができたら素敵ですね。

いつものように、これから社会にでる若い方に向けてメッセージをお願いしました。

「若人のパワーは自分にしかないものです。自分に負荷をかけること。しかし自分一人じゃ何も動かせない。海外どこでも認められる人になるためには、物作りも技術があれば自らの力でつながりを作ることができます。自分を磨いていくことですね」。厳しい世界で闘っていると、日本のみならず、世界レベルのステージで働くことができる、ということ。

「自らつながりを作れると、分け与えられる。自分で選ぶとお客様に共有できる」。

白いお花のモチーフもチョコレート!

ラボで一緒に働くパティシエが増えることを想定し、ラボは余裕のある広さがあります。「あと4人欲しい。デザイナーもいてくれたらいいですね」。敷居は低くし、つなげる仕事、ディレクトールを目指したいと語る西山さんでした。

さて、みなさんが誰かに分け与えることができるものは、何ですか? 青葉台、SOCORAに、磨き抜いた技を持ったストイックなパフォーマー、駄菓子屋おじちゃんの役割も担うスイーツ案内人がいます。

● SOCORA bespoke chocolate lab
横浜市青葉区若草台5-58 青葉台アベニューⅡ 1階
045-482-5745

(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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久保田誉子

久保田誉子

くぼたたかこ(ライター) 婦人服デザイナー、MD、バイヤーとして勤務の後、ファッション業界を目指す学生たちの就職支援に従事。2013年、横浜市青葉区区民企画運営講座「AOBA素敵ウォーキングコレクション」の運営委員となり、企画運営に参加。現在は地域活動の学校・地域コーディネーター、服育講座の講師も務めている。
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