【人物図鑑 14】平本 裕治さん –タスキと旨いお酒を携えてご縁を繋ぐアスリート

東急田園都市線青葉台駅から南へ2分ほど歩くと、創業から52年、近隣住人のみなさんの暮らしと共にある森野屋酒店があります。店内に一歩足を踏み入れると、ふわっといい香りに包まれました。「いい香りがします。何の香りですか?」「酒粕の香りでしょうかねえ。慣れちゃってあまり感じませんが(笑)」。

今回ご登場いただくのは、スパイスアップ編集部が「街のスゴいメンズ」と思う森野屋酒店の三代目、平本裕治(ひらもとゆうじ)さんです。平日の午前中にうかがうと、次々と来店されるお客様に対応されています。毎回決まって購入されるのでしょうか、コップサイズの梅酒を購入されるお客様。別のお客様には、お好みの味をヒアリングしながら、陳列されているお酒の蔵元の特徴を説明されています。

◆全員お酒が弱い酒屋

麹やお酒の効果なのでしょうか、綺麗な手でキリリと絞めた前掛けには、酒造メーカーである井賀屋酒造場のお酒「岩清水」の文字。平本さんが衝撃を受けた、心地よい・腑に落ちる味わいのお酒の蔵元さんとのおつきあいは長く、「マーズ&アース」といった新酒の誕生秘話や「GOWARINGO」について話してくださいました。

蔵元さんが卸し先の酒屋さんを限定する希少なお酒も並んでいます。インターネットで何でも購入できる時代ですが、森野屋さんには、唎酒師であるプロに好みや用途を伝え、蔵元のお話を伺いながらおすすめを購入することができる贅沢があります。たくさん並ぶお酒を前に、どれを選べばいいのか分からずに迷った経験は誰にもあるはず。これからは、年季の入った前掛けをかけたプロに「教えてください」と話しかける勇気を持ちたいと思います。自分の判断だけでは知り得ない世界の入り口に立つことができるかもしれません。

「でも実はウチはみんなお酒、弱いんですよ」。ちょっと面白いですね。しかし酒豪には気づくことのできない繊細さこそ大切なのかもしれません。

◆筋肉を追い込む

今年で5回目となる人気の青葉区民マラソン(第1回は悪天候のため中止)。今回は参加者1,000人規模の大会となり、平本さんは男子総合4位でした。実は、毎回入賞する実力のアスリートでもあり、4年間で2,000人を超える男子の部総参加者中、4年連続で総合入賞した方は、平本さんともうお一方のみという驚愕の実績です。田奈から中山、藤が丘から新横浜など、往復10Kmや20Kmが練習コースで、鍛え抜かれたアスリートの筋肉はTシャツ姿からも感じられるほどでした。

走るトレーニングをするようになったのはトライアスロン部に所属した大学生の時で、少年時代からやっていた水泳と、走ることの両方ができるなら丁度いい!と入部を決めたそう。「練習がキツいことは分かっていたのですが、何かスポーツを一生懸命やる『青春』がしたかったんですよね。高校生はゲームばかりやっている暗黒時代でしたから(笑)」

(写真提供:平本さん)

◆三代目として迷いなく仕事を決めた理由

「大学を卒業後は、色々と遊ばせてもらいました。これは感謝しかありません」。 トライアスロンのトレーニングで鍛えた実力でスポーツクラブのインストラクターとなり、飲食店での仕事も含めて、社会勉強の期間をご両親が見守ってくださっていたことに対する言葉でした。

「何でもいいので、夢中になれるものを見つけるといいですね。人生のメリハリをつけるといい。我慢しないで楽しいことをする」

続けることで大切なことがハッキリとして、人とのご縁も繋がっていくのでは、と若い方へのメッセージをいただきました。時間をかけて何かをやりきり、自然とココロとカラダが三代目のタスキをつなぐ方向を向いている。ご両親の懐深い優しさへの感謝と、平本さんのまっすぐ家業に向かう力が伝わってきます。

親は細かいことを口にせず、ゆっくりと準備をする時間を息子にプレゼントすることの大切さに気付かされました。

◆ご縁の数珠つながり

蔵元まで自転車で行き、電車で帰ってくる。平本さんならではの交通手段で各地を周られることもありますが、店舗に蔵元さんを招き、お客様が美味しいお酒に出会うためのイベントを月に1度のペースで開催されています。イベントは毎回大盛況。

「試飲できる銘柄をどう楽しんで飲んでもらうか、考えますねえ」。ガツンとインパクトのある味も知ってもらいたい。そこで出会った銘柄と比較して他のお酒も楽しんで欲しい。平本さんの熱い語りが続きます。

今の時期にオススメなお酒を伺ってみました。奈良県の美吉野醸造株式会社の「花巴」そして前述の長野県にある井賀屋酒造場の「岩清水」「GOWARINGO」。リッチな旨味とピュアな甘みや味わいをぜひとご紹介いただきました。

以前から平本さんには、街の様々なイベントでお目にかかっていました。地元ミュージシャンサポート隊の中にいらした時は、さりげなく控えめな立ち位置に居ながら観客を盛り上げ、本気で応援する。そんな平本さんを、私たちスパイスアップは知っています。街のみんなを楽しくする円の中に居て、人と人をつなぐご縁を大切にしている。持ち前の明るさと、トップアスリートのストイックな努力。今回もスパイスアップは、若くて周りの人たちを巻き込む力のある、素敵な方にお話を伺うことができました。

平本さんの視線は慣習を受け止め、今ココに、周りに、必要なモノやコトは何なのかを静かに追っているように感じました。静かで寛容な力と新しいアイディアが、どのようにつながり、広がっていくのか楽しみです。

有限会社 森野屋酒店
横浜市青葉区榎が丘1-6
045-981-6908
HP http://www.morinoya.com/


(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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