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元石川高校の2018年度アントレプレナーシップ授業スタート!

柏木由美子

神奈川県立元石川高等学校(横浜市青葉区元石川町)で、選択教科としてアントレプレナーシップ(以下、アントレ)を選択した2年生(79人)を対象に2018年度の授業が始まったと聞き、第二週の授業を当編集部の柏木と久保田の2名で見学してきました。

2020年度から大学入試が大きく変わるのは周知のことですが、「センター試験」に代わって「大学入学共通テスト」がスタートします。もう教科書や参考書の丸暗記では受かりません(笑)。記述式の設問ができたり、英語が「読む・聞く」に加えて「話す・書く」の4技能で評価されたりします。これからの社会でより求められる「思考力・判断力・表現力」を重視する試験になります。

グローバル化、製造業をサービス業が上回る産業構造の変化、生産年齢人口の減少など、世の中が猛スピードで大きく変化しています。アントレプレナーシップ(企業家精神/起業家精神)のごとく、世の中の変化を読み取って事業の舵取りをしたり、新しいことに挑戦して社会をよりよく変革していく ─ そんな力がこれからますます求められます。

元石川高校のアントレは、そうした力を生徒一人ひとりが蓄えていくことを目的とした、同校オリジナルの授業です。授業の前に、岡部佳文校長から学習内容や年間スケジュールなどをご説明いただきましたが、PBL(Project-Based Learning;課題解決型学習)を用いたカリキュラムは講師陣も多様で、大学生や教授、ビジネスパーソン、地域の方々などなど。この日は、高校生のキャリア支援を行なっている 立教大学経営学部の高大連携学生プロジェクト の学生たちが講師でした。

この日の生徒たちのゴールは、「リーダーシップ」を理解することと、これからのアントレにワクワクを感じてもらうことの2つ。ここでいうリーダーシップは、「権限なきリーダーシップ」です。カリスマ性を発揮する人しかリーダーになれないのではなく、自らのパーソナリティを生かし、周囲を巻き込みながら成果を出していく。しかもそのスキルは訓練によって誰もが得られるものです。授業では、自分を見つめ、チームにおける自分の役割を考えそれを仲間と共有する時間が設けられていました。

また、協力しあって問題を解決したりアイデアを1つにまとめていくグループワークもありました。ワークの途中では講師の大学生が生徒の輪の中に入って談笑する光景があちこちで見られ、アントレの最初のステップを上がる生徒たちには最適な講師です。

なお、この授業は教科なので学校の先生もいます。生徒を評価するのは講師ではなく先生です。授業中の様子やレポートをもとに、あらかじめ設定した評価基準ごとに6人の先生が生徒一人ひとりの学習到達レベルを評価するそうです。テストの点数では評価できないので、先生たちも大変です。

授業の後、講師と先生に私たち見学者も加わり、授業の感想や意見などを交換しました。ただ見学するだけではなく、見学したからにはフィードバックが求められる仕組みです(笑)。

今後、アントレの生徒たちは、7月まで発想法や課題発見、情報整理、プレゼンなど学び、8月からは「企業連携」「地域連携」「ものづくり」の3つから実践テーマを1つ選択。PDCAサイクルを回しながら企画を立て、企業への最終プレゼン・実施・最終報告へ向かいます。

こうしたアントレ授業を行なっているのは、現在は県下で元石川高校が唯一とのこと。企画・運営している学校の現場は相当な苦労があると察しますが、親でも先生でもない、いろいろな大人の知識や経験を吸収してかつリアルな環境で力を試す場が与えられることは、必ずや生徒たちの将来に役立つと思います。

私たちスパイスアップ編集部は、プロボノ集団として互いのスキルを生かしながら地域課題に取り組んでいるので、まさにメンバーの一人ひとり権限なきリーダーシップを発揮していくべき団体。大いに刺激を受けました。

アントレ授業は、事前に申し込めば見学できます。元石川高校の取り組みに関心のある方、高校生たちと一緒に学びたい方、ぜひどうぞ。

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柏木 由美子
柏木 由美子
スパイスアップ 代表
システムエンジニアを経てIT関連の編集・執筆に従事後、フリーランス。現在はプロボノ活動でキャリアと暮らしを地元へシフト中。地域の異分野協働を通じた新しい価値創造を目指し、「スパイスアップ」を軸に「かわもりあおば」「日体大SMG横浜 オフィシャルサポーターズクラブBLUES事務局」「まちの相談所ネットワーク」等で活動。まちづくり・福祉分野の取材・執筆のほか、最近は竹の地域循環に取り組む。
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