東急田園都市線青葉台駅から徒歩10分ほどのつつじヶ丘。談笑しながら白髪のご婦人のお客様と店舗から出ていらしたのは、フーデットパーカーと黒のスリムなシルエットのパンツをシンプルに合わせ、鮮やかな朱赤のシューズコーディネートが印象的ないで立ちの方でした。今回ご登場いただくのは 株式会社ゼン・コーポレーション 代表取締役の岡澤宜和さんからのご紹介、美容室Snip Snap 代表の三土手大造(みどてだいぞう)さんです。

カウボーイハットや革のガンベルトが壁に掛かり、置かれているグリーンはサボテン。アーリーアメリカン調にディスプレイされた店舗にお邪魔してお話を伺いました。


 

◆「提供」と「提案」のバランスが大切

美容室の椅子に座る時、1時間半後の同じ鏡に映る自分の姿は、きっと可愛らしくまた格好よくなっているはず、という期待感があります。そんな気持ちに対して三土手さんは「心地よい意外性を追求することを心がけています。提供と提案のバランスが大切だと思うんです」。

考えてみると、シャンプーをしてもらう姿勢はとても無防備。美容師さんを信頼し、リラックスして体を預ける時間でもあります。スタイリングに迷っている時、的確な技術とブレないアドバイスを受けて美容師さんに託す時間はとても贅沢なこと。ファッションもそうですが、メイクや髪のスタイリングが決まっていたら気分も上向きになり、自然と表情も良くなりますものね。


 

◆確かな技術力を持つこと

写真右が三土手さん。革靴にオーバーコート。おしゃれ!(写真提供:三土手さん)
三土手さんの進路に光を射したのは、中学2年生の時に出会った美容師さんでした。ご両親は千草台でお米屋さんを営み、母方の御祖父様は宮大工さん。手に職を持つ仕事に就くことは自然な環境でした。高校時代に進路を考える時まで変わらず持ち続けた美容師への憧れは、三土手さんの職業を決めることになりました。
 

◆ないものは創る

パワーリフティングのタイトルを獲っているお兄様のスタジオで、100Kgのベンチプレスに成功した三土手さん(写真提供:三土手さん)
小さい頃はぜんそくがあり、激しいスポーツをすることはあまりなかったそうですが、小学生時代は空手を習う少年でした。しかしどちらかといえばインドア派で、竹とんぼやプロペラを使ったおもちゃで遊び、ゴムをつないで開閉式の自動ドアの仕組みを作るなど、既存のおもちゃには飽き足らず、工作が好きでした。

2歳年上のお兄さんと従兄弟の3人で遊ぶことが多かった頃、二人はお小遣いをもらうとするお菓子やおもちゃを買っていたそうですが、三土手さんは違いました。お小遣いを少しずつ貯めてはお肉屋さんへ行き、ステーキ肉とステーキソースを購入して自分で調理して食べる。子供の頃から欲しいものは明確で、計画して実行するタイプだったのですね。

漫画を読むことや描くことが大好きで、小学校4年生で描いた漫画は漫画コンクールで優勝するほどの腕前でした。中学でも漫画研究部に所属し、他の部員のストーリーを受け継いで描いていく漫画リレーで技術を鍛えたとのこと。観察する力やストーリー構成、それを展開して画にする力はその後の表現する力を蓄える基礎となったのかもしれません。
 

◆恩を忘れないこと、自分の心に負けないこと

たまプラーザ、都筑ふれあいの丘、青葉台、中山。時間を共にし、見て覚えながらそれぞれの美容室から技術を学び、なかでも26歳から3年間お世話になった、とびきりキレイな仕事をする仙人のような師匠からは一流の技術や店舗運営にまつわるサービスの諸々も教わりました。そして道行く200人以上に自ら声をかけてヘアカットモデルになってもらうという研鑽を積み、結婚して3年ほど経った32歳、現在の青葉台で美容室Snip Snapを開店。理容師をされている奥様と二人三脚で、地域ケアプラザや老人福祉施設などからの要望に応える訪問美容サービスを提供しています。

12年前にお祖母様を、7年前にお父様を亡くされる前に、病床のご家族に「あと何回こんな風に切ってあげられるだろうか?」このことに気付いてから、感謝や受けたご恩を忘れずに、相手と向き合う時間を大切にしている信条を話してくださいました。

「しばらくカットに行かなくて済むように短く切ってほしい」。そんなご家族の要望を理解しつつ、「もっと可愛くしてあげたいと思うんです」。ご本人の満足度に寄り添う姿勢で美容のプロとして成すべきことを大切にしていらっしゃることが伝わってきます。病気でも、年配だったとしても、ご本人は少し先よりもその時、可愛いもしくはかっこいいスタイリングにして欲しいはず。

ふんわりとした優しい口調ですが、家族の髪を切る時と同じような気持ちでハサミを持つ信念、そして心意気を感じました。決して饒舌ではないのですが、丁寧で優しいお話ぶり。ずるいこと、妥協はしないこと。そして自分の心に負けないように行動するためにはどのようにすべきか。人としてあるべき姿について探求する真っ直ぐな視線を感じました。

今の三土手さんがあることを考えて、感謝したいと思う人はどなたでしょうか?と質問しました。「理不尽と思うことを言ってくれた人。一杯イジメてくれた人です」。というお答えでした。試練を与えられたからこそ今の自分があるとのこと。広く深い経験が人の心を理解し、親身になって相手に向かい、幸せにする力を発揮するのですね。
 

◆“足音がパタパタする人”との出逢い

「足音がパタパタする人に弱いんです」。パタパタ、ですか?「はい」。

現在は出産のために帰省中の娘さんとお孫さんもいらっしゃる大家族です。足音をパタパタさせながら歩く奥さまに出会ったと話してくださった当時の三土手さんの笑顔は、はにかんでいて、でも可愛らしくてたまらないという気持ちが溢れていました。技術に妥協せず、家族を大切にする。こんなに素敵な奥さまと一緒だからこそ、実現する活力となるのですね。

お客様が望むスタイリングに応える技術力と、悩む心を受け止める哲学者のような人生観を携えている。年代を問わず、まっすぐに人を見つめ、確実な技術を持って「可愛らしく」してくれる美容師が、青葉台にいます。

今後、待合いスペースの場所に工夫をして、地区で活動をしている方々のフライヤーを置くスペースをもっと増やすとのこと。早速、スパイスアップ設置店になっていただきました。

 

美容室 Snip Snap
横浜市青葉区つつじヶ丘36-22 川崎ビル102
045-984-8808


(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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