【人物図鑑 10】岡澤宜和さん – 快適な住空間の夢先案内人。

田園都市線、江田駅から徒歩7分ほどの荏田町にあるオフィスに伺いました。大通りから一本入った道の樹々の葉は紅葉しています。今回ご登場いただくのは田園都市長生館代表の青木一明さんからのご紹介、株式会社ゼン・コーポレーション 代表取締役の岡澤宜和(おかざわよしかず)さんです。

お約束の13時、打ち合わせが終わられた方と入れ違いに入室し、住宅資材の見本帳がぎっしりと並んだ本棚で仕切られた打ち合わせスペースでお話を伺いました。壁は、青空と雲柄、花柄、木調の壁紙で仕上げられ、窓からは煌々と陽が入っています。


 

◆失敗は糧となり、経験の一つとなる

店舗や住宅のリノベーションを多数手がけている岡澤さん。リノベーションは、新しく建築していくことと違って、かかる時間や資材が合わないといった想定外の現場に出くわすことが多いのではないでしょうか?

「失敗の連続ですよ。はがしてみると、大変な状況になっていたことは、よくありますね。でも、次の仕事では失敗にならない。それが経験になりますから」。現場で起こる出来事を受け止めて解決し、できることを増やして積み上げていく。今、目の前の修復を待っている古びた環境を、岡澤さんは利用者にとって快適な空間をイメージして現実にすることができる。頼もしいその力は、一体どのような経験を経てつくられたのでしょうか?
 

◆任された新規事業で鍛えられた力

世田谷にある不動産業の会社に勤務していた岡澤さんが、たった2人で新規事業の立ち上げを任されたのは28歳の時のことでした。ほどなく親会社が倒産という危機に見舞われますが、二人三脚で経営を継続。市が尾にある会社経営の方に手腕を買われ、拠点を横浜市へ移しました。その後、さらにお客様のために貢献できる会社を目指して独立。美容室や車両メーカーの店舗、住宅や賃貸物件のリノベーションを手がける会社を経営されています。そして大型客船の内装など、依頼される業種も多岐に渡っています。

企業のブランド戦略の改革に伴うリノベーションでは、店舗のイメージカラーや照明の変更なども手掛けています。複数の業界から求められるデザインや利便性に対応し、様々な条件の現場を次々に任されている岡澤さんのお人柄が気になります。


 

◆自然と融合する

ご出身はどちらでいらっしゃいますか?「田園都市長生館の青木さんと故郷が同じで、長野県です」。遊び場所だった近隣の山で秘密基地を作って遊んだ少年は、中学生になると吹奏楽部でトランペットを担当、そして剣道部にも籍を置いて積極的に活動する生徒でした。練習は相当大変だったのではないでしょうか?「いや、やればやっただけ“なり”ますね。最近は出たがりの人がいません。これは何だろう、という好奇心を持って欲しい」。

20代前半、スキューバダイビングで宮古島滞在中に訪れたダイビングショップで、ヨットで世界一周した人に出会い意気投合。翌日ヨットに乗せてもらう経験をした岡澤さんは、ヨットに乗る機会が増えていきました。

「風が凪の時、ヨットは進みません。技術力が進化している現在でも、風を待たないとうまくいかない。できあがってしまったものではない世界がある」。自然と融合し、チームで帆に風を捉える瞬間をつくり、進むヨットについて話す岡澤さんの表情は、穏やかな中に、その手応えが伝わってくるような力がありました。

「自分で決められるものじゃないですよね」。個人の技術力もさることながら、それぞれの息を合わせ、大きな力に作り上げて楽しんでいくことは吹奏楽と似ているかもしれません。大自然の中でチーム力を発揮できることは、大自然の抗えない大きな力を受け入れて待つ謙虚さと、果敢に挑み続ける粘り強さを合わせ持つことなのですね。

30フィート12人乗りのヨットを仲間と楽しむ岡澤さんは、海を愛するタモリの日本一楽しいヨットレース「タモリカップ」で優勝実績の持ち主なのです。
 

◆美しく、使いやすくする。そして護る価値観を共有する

お仕事として依頼された様々な案件の中で、印象的だったお仕事、大変だったお仕事について伺ってみました。思い出すように少しお考えになってから、「客船ですかね。客船は曲線でできているんです」。内部も曲線の建材が使われるとのこと。そして何年にも渡って少しずつ継続して関わっていく、川崎市にある重要文化材を修復維持するためのお仕事にも携わっている岡澤さん。先人たちの技術や想いも受け継ぎ、かたちにしていく。対応なさるお仕事の幅の広さは、想像をはるかに超えていました。

お客様は何を大切にして依頼するのでしょうか。まず修復を依頼するものの価値観を共有できること。そして修復する内容や手順、そこにかける時間をじっくりと話し合う手間を惜しまないこと。それをできる人に仕事を頼みたいはずです。

相手と情報や状況を共有できていなかったことによって、大きくすれ違ったり問題を発見できなかったりすることが原因の問題が大きなニュースになっています。そこに、依頼主とどのような立ち位置で関わるのか、「お客様と話しながら決めたい」ことがお話から伝わってきていました。使いやすく美しく修復していく技術は、相手と合意する話術にあるのかもしれません。

バブル期の山も、谷も知る豊富な現場経験から、現場で起こる問題も一つひとつ大切にお客様と話し、解決し、依頼主の希望をかなえる空間を造る力の持ち主の岡澤さん。その経験から若い方へのメッセージをお願いすると、「失敗を恐れずに」とのこと。

お忙しいお仕事の合間に時間を作っていただいたインタビュー時、「カッコウ、カッコウ……」携帯電話の着信音でした。大自然の中で育ち、遊び、畏怖を知り、諦めずに挑み続ける姿勢の岡澤さんは、終始淡々とゆっくりとした語り口です。気まぐれな凪や大きな力を持つ海風に向かい、仲間とヨットを操る。自然と融合する心を持って、暮らしや職場環境に快適を届ける夢先案内人が、荏田町にいます。
 

株式会社ゼン・コーポレーション
横浜市青葉区荏田町475-6-101
045-914-5505


(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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久保田誉子

くぼたたかこ(ライター)
婦人服デザイナー、MD、バイヤーとして勤務の後、ファッション業界を目指す学生たちの就職支援に従事。2013年、横浜市青葉区区民企画運営講座「AOBA素敵ウォーキングコレクション」の運営委員となり、現在も地域活動として企画運営に参加している。


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