【人物図鑑 01】堀部伸夫さん – 秀逸なアイテムの揃う基地で遊ぶ研究員。モノの機能を最大限に引き出し、活用方法を発信する伝道師。

青葉台駅から徒歩15分ほどの桜台にある、ガラス張りの店構えが印象的な「メガネ専門店 ヤマセングラスワークス」(以下、YAMASEN)。スパイスアップ編集部が、「街のスゴいメンズを紹介する『人物図鑑』の第1回を飾るのはこの人しかいない!」と訪ねたのは、そのYAMASENの店長、堀部伸夫さんです。

平日の午後、店内にはご婦人のお客様とお話し中の堀部さんのお声が響いています。選択可能な方法を提示し、次にそれを絞っていくことができる簡潔なアドバイス。お客様が納得してオーダーを決めていく様子が聞こえてきました。

◆問題点を解決できる技術力の高さが武器。地域の人が相談できる拠点を作るには?

眼鏡をかけなければよく見えないから、眼鏡を作る。矯正器具であることは確かですが、「眼鏡に対するネガティブなイメージを払拭し、欲しくなるもの、友人に薦めたくなる眼鏡店をつくりたかったんですよね」。

オーナーである落合さんの持つ、業界の最先端で一流の技術と審美眼、さらに店長の堀部さんが持つ機能やシルエットデザインへの深い造詣が両輪となり、YAMASENは今年33年目を迎えています。

「眼鏡と、それに加えて何か」。メガネ専門店であることを軸として、ここにふらっと立ち寄って相談すると問題が解決する。そんなソリューションを提供できる場所を目指した、YAMASEN創業に至るコンセプトを話してくださいました。

◆Macintoshの日本市場拡大に向けて奔走。

オーナーの落合さん(左)と堀部さん(右)。手前のコンピュータは「Macintosh SE/30」

YAMASENが創業した1985年当時、アメリカのアップルコンピュータ社(現在はアップル社)から初代「Macintosh(マッキントッシュ、Mac)」が前年に発売され、グラフィックデザイン、書籍などの紙面を構成する文字や図版の配置、映像表現分野の作業を向上させるパーソナルコンピュータとして話題になっていました。

コンピュータプログラムの開発も手掛けていた堀部さんは、デザイナーの一助となるソフトウェアプログラムとMacintoshを合わせて紹介する機会が増え、日本に数社しかない代理店の役割を担っていた時期がありました。今や知らない人はいないアップルですが、「日本でアップルを紹介させて欲しい」とアメリカ本社に直接オファーし、YAMASENはアップルのパートナーとなっていたのです。

アップルコンピュータジャパン(現在はアップルジャパン)のオフィスに、堀部さんのデスクが設置された時期があったとか。アップルのトレーニングセンターで使用するカリキュラムや教材を制作したり、国の教育研究機関からの要請を受けて公立小学校へMacintoshを導入するプロジェクトにも関与された実力者です。堀部さんの評判は口コミで次々と広がり、近隣の美容室などのコンピュータ導入サポートの相談も受けていました。「眼鏡屋の奥でそんなことをしていた時期がありましたね(笑)」。

左:アップルの開発者会議「Developers Conference ’89」でもらったバッグ。もちろんロゴはレインボーカラー!
右:ヤマセンで制作していたMac用教育ビデオシリーズ。放送機材を購入して撮影編集していたそう

秀逸なツールを紹介し、生活や仕事をワンランク快適にしていく。オーナーと堀部さんの目指した、生活者が身近に相談できる拠点作りは、業界の壁を超えていました。必要とされる内容を実行に移すことができる、頼もしい相談相手なのです。

◆地元を盛り上げる仕掛け作りと動画

私が最初に堀部さんのお名前を目にしたのは2014年8月公開の動画「HAPPY!青葉台」のエンドロールでした。

当時流行していた、ファレル・ウィリアムスの「HAPPY」。その動画の青葉台バージョンとしてYouTubeにアップされていたものでした。日本全国各地発信の「HAPPY」動画を閲覧しましたが、「HAPPY!青葉台」の企画の素敵さと、リズミカルに画面が切り替わる編集クオリティーの高さは群を抜いていました。この動画の撮影・編集を担当されたのが堀部さんです。

青葉台の皆さんのウキウキと楽しそうな表情が撮影され、ラストは、堀部さんの「OK。はい、ありがとうございます」と締める声が響いていました。

ビデオカメラに加え、現在、堀部さんの研究対象の1つは10年前から注目していたドローン。何を購入すると良いか、それはどのような使用感なのか、動画技術向上のための探究心が刺激される情報を動画配信されています(Nobuo Horibeチャンネル)。商品の細部や店内の様子を含め、複数のアングルから撮影・編集されたショートムービーです。


自転車も、楽器も、ドローンも、調べ抜いていいものを手に入れる。いろいろな角度から、機能をじっくりと深く研究されたアイテムは、必要とされる時、その長所を活かして最大のパフォーマンスを発揮するのですね。

「やっぱりいいんですよ、一番いいものはね」。“堀部研究員”は、それを使いこなすための努力を惜しみませんが、そのイタズラっぽい笑顔は、楽しくてたまらない、といった少年のようでした。

◆男のロマン

「あのね、無線をまた少し勉強しようかと思っていてね。電波が月面反射してくるなんて、ロマンがあると思わない?」

少し身を乗り出して話してくださったのは、アマチュア無線のことでした。アウトドアで使える機種の購入を検討中とのこと。スマートフォンが全盛の現在、昔からあるアマチュア無線に「次の何か」が見えているのかもしれません。スマートフォンや携帯電話のデータは基地局との通信。しかしアマチュア無線の中でも月面反射通信は、かなりマニアックなジャンルのはず。だからこそ、通信成功にかける熱意が高まるのですね。

さまざまなジャンルに興味を持って関わってきた堀部さん。「若い人たちにメッセージをいただけませんか?」とお願いすると、「無駄も大切、ということかな」。一番いいモノや一番いい瞬間を切り取るためには、どのくらいの材料を比較し、取捨選択し、どのくらいの時間をかけて完成させるのでしょうか?パソコンやスマートフォンを使って、何でも安直に購入できる時代だからこそ、選び取る目を養う経験が必要なのかもしれません。

◆作り手がものづくりに注いだ愛情を感じ、受け止めて身につける。

堀部さんのファッションが気になっていました。カスタムメイドのシャツ、ラペルピンが光り革のバスケットボタンが付いたベストにデニム。「お気に入りのブランドはどこですか?」という質問はしっくりこない気がして、「服を選ぶポイントは何でしょうか?」とお聞きしてみました。

「紡がれた糸にはパワーがあり、それをいただいて生きている。と聞いたことがあるんですよ。作り手の愛を感じるものを身に付けていたい。あとは、リペアできるものを選ぶかな」。素材の良さを理解して大切にし、修理して使い込む。作り手に対するリスペクトを込めた、堀部さん流のモノに対する愛情を感じた一言でした。

「愛情を感じるものを身に付けていたい」。こんなキザなセリフを、目を合わせてウットリと、そしてサラッと言えてしまう。本当にカッコいい、少年のような大人が、桜台のYAMASENにいます。

メガネ専門店 ヤマセングラスワークス
https://www.yamasen.co.jp/


(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

人物図鑑バックナンバー

久保田誉子

久保田誉子

くぼたたかこ(ライター) 婦人服デザイナー、MD、バイヤーとして勤務の後、ファッション業界を目指す学生たちの就職支援に従事。2013年、横浜市青葉区区民企画運営講座「AOBA素敵ウォーキングコレクション」の運営委員となり、現在も地域活動として企画運営に参加している。

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