【人物図鑑 21】松村 誠さん ─ 樹の目をよみ、花の香りも束ねるクラフトマン

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イルマカフェ

リースは花だけでなく樹木を材料に使ったものが多い

◆まるでインテリアブックの中の世界

東急田園都市線江田駅西口改札を出てほど近くにある、花屋ラスティーク(Rustique)。たくさんのグリーンが並ぶお店の入り口は、光が屈折するアンティークのガラスがはめ込まれた木のドアです。ガーデンに置かれた鉢やリースが季節の移ろいを感じさせてくれています。

猛暑の陽射しから逃れて開けた扉の奥には、天井や壁にも飾られたインテリア雑貨と個性的なお花が並び、お部屋を素敵にするヒントが詰まった空間が広がっています。

今回ご登場いただくのは、カフェスプリング の古屋修さんから「お店が隣同士で、開店時期がほぼ同じなんですよ」とご紹介いただいた、花屋ラスティーク のオーナー・松村 誠(まつむらまこと)さんです。

アイアンやブリキのアンティーク雑貨とドライフラワーが飾られた店内はインテリアブックを見ているよう
(写真 右上・下:ラスティークさん提供)

お花の香りとインテリア雑貨に充たされた店内は、足を踏み入れた人を優しくフワッと包む世界感があります。この場所にお店を開業することを決めてから、かなり時間をかけて施されたという内装は松村さんご自身によるもの。オフホワイトにペイントした木材で壁を作り、床材や花台なども自ら加工制作されています。

「もともとは、居抜きで鉄骨むき出しの空間だったんですよ」。見上げてみると天井や壁の一部に鉄骨の躯体が見えますが、店内の雰囲気からは木で建てられた家のお部屋に案内されたような感じです。

花材の仕入れは、ちょっと珍しいお花や樹木の仕入れが可能な世田谷の市場までいらっしゃるとのこと。近隣にも生花市場はありますが、日々の仕入れは松村夫妻が納得できる品揃えの市場へ足を運びます。

店内に置かれている白いキャビネットには、海外で買い付けたガラス食器やブリキの小物入れなどアンティーク雑貨が並んでいます。アンティークを扱う「道具商」有資格者で、生活を素敵にする視点での買い付けだけではなく、メンテナンス方法などの知識もお持ちです。

キャビネットには、アンティークの鍵・陶器・額などの宝物が。「旅行も兼ねて行った先で集めたんです」
(写真下:ラスティークさん提供)

◆今とこれからを一緒に考えるのは家族

生花店をなさるようになったのは、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

「逗子で住宅のリフォームなどを手掛ける会社で店長をした後、小田原の実家の土地管理をすることになりました。ちょうど角地にあった立地を活かして仕事をするには、花屋がいいかなと思ったんです。その場所を改装して生花店を開業しましたが、小田原はお寺が多く、扱うのは仏花が中心。そこに暮らす人も減少傾向だったことが気になっていました」

前職の会社でインテリアデザイナーとして勤務していらっしゃった奥さまと結婚、これからの暮らしを考えるときに、お店の場所探しを始めることになりました。店舗として選ぶ条件は、東京とつながる暮らしをする人口があるエリアであること、オシャレな街並みであること。奥さまと一緒に一駅一駅降りてその街の雰囲気を確かめられたそう。

じっくり時間をかけて決めたこの場所で、三カ月以上の日数をかけて、丁寧に、丁寧にこの優しい雰囲気を持つ世界を作り、2005年11月に店舗をオープンされています。

松村さん、このエリアに決めてくださってありがとうございます。そのおかげで私たちは大切な人に素敵なお花をプレゼントするとき、自室にグリーンを購入したいとき、相談できる場所ができました。

◆二人三脚で伝えるお花の世界の素晴らしさ

お花のお教室やイベントの開催、お店の運営。日々の家での暮らしだけでなく、お仕事も奥さまとご一緒のことが多いと思います。奥さまについてうかがうと「いなければならない存在です」。とまっすぐな視線で言い切る松村さんに照れている様子はありません。

確かにパートナーの存在はそうなのですが、迷いなくきっぱりとした口調に、二人三脚でお仕事をされてきた実績の大きさと自信が感じられました。

あれは奥さまのご配慮によるものだったのでは?と思い出したことがあります。

息子が幼少だった頃お店に伺ったときのこと、子供の目の高さの位置にある木箱に絵本や木のおもちゃが置いてありました。小さな子供を連れてお買い物をするとき、ほんの少しの時間だけでも子供が安全に留まってくれるスペースがそこにあったらゆっくりと品物を選べるのに、と思うことがあります。

お花を贈りたい人のことを想って相談する時間や、花材の組み合わせについてアドバイスを聞く時間、そしてお花を束ねてくださるのを待つ時間。子供を自然と惹きつける絵本のコーナーがあったおかげで、私はホッとひと息つく時間を過ごすことができていました。

同年代の子育てをしている同じ感覚で配慮をしてくださる奥さま、プラスチックのおもちゃ箱にはない温かみのある木箱を制作される松村さん。お二人がお話をしながら手際よく作ってくださるブーケ。プレゼント予定のブーケを受け取る頃にはお花の癒してくれる力も加わり、私が元気づけられていました。

◆地域で暮らす人に提供する「製作する喜び」

地元の市ケ尾小学校の保護者向けのイベントの一つに、クリスマスリース作りの講座があります。もう何年もその講座講師をラスティークさんが担当されています。

奥さまが講師をされる講座は松村さんと息の合った連携で進行し、用意された花材や装飾のためのパーツは、こんな風に使うと素敵なんだ!と気づかせてくれるものばかりでした。定番の丸いリースやスワッグなど、毎年連続して参加しても新しい世界を教えていただけるクリスマスリース講座になっています。

◆会社員から木工の世界を目指すって?

岐阜高山にあった工芸技術学校でのショット。松村さんが見せてくださったのはポジフィルム!
(写真:松村さん提供)

ずっと専門職で仕事をしていらっしゃったのかを伺うと、意外な答えが返ってきました。

「コンピューター関係の仕事をしていましたが、36歳になる時だったかな、岐阜高山にあった木工の専門学校へ入学を決めたんです。2期生でした」。会社員としてずっと仕事をやり続けていくことに違和感を持たれたとのこと。全くジャンルの違う世界に生活の場を移し2年間学んだのち、まだ創成期の学校にそのまま教える立場として残り、樹木の産地である岐阜高山で5年間木工にかかわることになりました。

会社員としての生活から木工の世界へ。新しい世界に飛び込む、かなり大きな方向転換でいらっしゃったのですね。中学・高校は陸上部で活躍する学生時代を過ごされたそうですが、熱いエネルギーを燃やす力はその頃鍛えられていらっしゃったのでしょうか。

大きく生活の軸を変える経験をされた松村さんに、いつものように若い方へのメッセージをお願いしました。

「親と一緒に生活していると責任を背負っていないことになります。社会人になったら家を出ること、自活することがいいと思います。若いうちに失敗を沢山経験したほうがいい。やり直しもききますからね。まだこれは高校生の息子には言っていませんけれど(笑)」

◆自然の力は疲れを癒し、活力の源となる

『Rustique:田園の』

植物には、疲れや辛いことのある日常生活の中の様々な出来事を優しく癒してくれる力があります。家にグリーンがあること、お花のいい香りがあること。素朴で個性的な花材を揃えて香りも束ね、私たちの生活を豊かにする力をくれる。

江田に、センス良く居心地の良い空間を作るためのプロ、生花と雑貨のお店ラスティークのオーナー、松村誠さんがいます。

●花屋 ラスティーク
横浜市青葉区荏田北3-2-3-101
045-915-6687

(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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久保田誉子

久保田誉子

くぼたたかこ(ライター) 婦人服デザイナー、MD、バイヤーとして勤務の後、ファッション業界を目指す学生たちの就職支援に従事。2013年、横浜市青葉区区民企画運営講座「AOBA素敵ウォーキングコレクション」の運営委員となり、企画運営に参加。現在は地域活動の学校・地域コーディネーター、服育講座の講師も務めている。

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