地域で生きていくために

【パパコラム:地域で生きていくために 最終回】コウノドリに思う

<はじめに>

みなさん、「ダウン症」ってご存知でしょうか。なんとなく顔つきが似ていて、知能の発達が通常ではないな、というのが多くのイメージではないでしょうか。さらに読む

最終回 あやが僕を選んでくれたから

みなさん、こんにちは。早いもので最終回となってしまいました。これまで、あやの成長と周りとの関わりについて書いてきました。今回はダウン症児の親として、障害を持つ方、そのご家族、地域の方々に向けて僕個人の思いを書かせてください。

みなさん、昨年の人気ドラマ「コウノドリ」はご覧になりましたか?毎回毎回、涙もろい自分は涙腺崩壊でした。最終回は、出生前診断のあり方、ダウン症についてでした。出生前診断とは、胎児の診断を目的として出生前に染色体異常などがないかなどを調べるものです。

ドラマでは実際にダウン症のお子さんを育てられている奥山佳恵さんの好演もあり、親の気持ちなどを捉えた感動の内容でした。出生前診断については、命の選択にもつながることで、ドラマのテーマになっていました。実際にダウン症児の親としてはいろいろと意見はあるのですが、ここでは控えたいと思います。ただ、当たり前ですが、診断をした、しないにかかわらず、生まれてきた子は希望にあふれた人生のスタートに立っているのだから、親は子が自立するまで支援していかなければなりません。

ダウン症を持って生まれてきた赤ちゃんを見て、どんな親も動揺はします。時に、「なぜ自分の子がダウン症?」と、自分を被害者と感じてパニックになる方がいます。

でもどうか、生まれてきた赤ちゃんを見てください、赤ちゃんの目を見てください。ダウン症などとは関係なく、今を生きようとしています。夢にあふれて生きようとしています。この子を放っておけますか?1分1秒を無駄にしないで、愛情を注いでください。これはダウン症に限った話ではありませんが…
 

僕の思うこと。あやの思うこと。

今あやは6年生。小学校卒業を迎えます。養護学校にいくか、一般の市立中学にいくか、ものすごく迷ったのですが、市立中学に行くことに決め、いろいろと準備をしています。

毎日あやを見ているので、「もう中学生か、早いなー」というのが最近思うところですが、振り返ると、このコラムでも綴ってきた通り「周りに支えられ続けてきたんだな」と感謝の気持ちでいっぱいになります。家族はもちろん、同じマンションの方々を始めとするご近所の方、友達、学校の先生、支援員さん、ボランティアさん、放課後デイの先生、ボランティアをしてくれる学生さんなどなど。

あやが生まれた時、産婦人科の看護師さんから「あやちゃんはお父さん、お母さんを選んで生まれてきたのですよ」と言われました。その時には正直、「何を言っているのか、そんなわけないでしょ」と思い、慰めの言葉みたいで、かえって腹立たしさもありました。

ところが今は、その言葉が真実だと心から思っています。

あやは、どこかに生まれる命だったのであれば、やはりここしかなく、あやが選んだのだと思います。ママがいてパパがいて姉がいて、地域の人がいて、そして出会うべき人がいて。そのすべてを分かって選んで生まれてきたのだと。

あやが生まれてきてくれたことで、我々の人生は豊かになったと思います。あやがいなければ、おそらく出会わなかったであろう人々とたくさん出会いました。2倍、3倍、いや、それ以上。あやがいなければ、僕は恰好つけて生きていただろうし、いい親を目指していらないプライドを持ちすぎていたと思います。

今は泣いたり、笑ったり、怒ったり、感謝したり、悩んだり、本来の倍以上の感情とともに毎日を過ごしています。不満を持つくらいなら当たって砕けろの精神で、いろいろな方に相談したり、向かっていったり。これからもそれは続けていきたいです。

最後に、世間では「障害者」を「障がい者」と表記すべきだという議論があります。僕からしたらどちらでもいい。障害者は自分自身が周囲の障害なのではなく、自分が何かしようとする時、生きていこうとする時に越えるべき障害が人より大きいということなのです。だから僕たちは、あやが歩んでいく先にある障害を取り払うべく、地域のみなさんと共に歩んできたし、これからも共に歩んでいきたいのです。

みなさん、一年近くに渡りお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

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ABOUT ME
松波 直樹
S44年12月生まれの47歳。出身は東京都国立市。現在、妻・長女(中2)・次女(小6)の4人で横浜市青葉区に在住。都内大学を出て、保険会社に入社し、埼玉、千葉、仙台、東京と転勤し、現在は横浜の支店に勤務。学生時代はラグビーや競技スキーをしていたものの、仕事の忙しさを言い訳に、社会人になってからはだいぶ不健康人間に。ロンドン五輪で村田選手が金メダルを獲ったことに感動して、ジムで週1回キックボクシングを始めて、気分はなんちゃってボクサーになっています。