青葉台駅から歩いて5分。つつじが丘にあるお店はランチ営業がひと段落した時間でした。掘りごたつ式のテーブルでゆっくりとお話をうかがいました。今回は、株式会社ナナシフードサービス 平英樹 さんからのご紹介、「居酒屋 八郎右ヱ門(はちろうえもん)」の代表、上谷孝夫(かみやたかお)さんです。ちょっと厳ついおじさんを想像して縄暖簾をくぐりましたが、スラリと長身、ふんわり優しい笑顔の上谷さんに迎えていただきました。

奥にはマンガの本棚。お客様がシリーズ読破されるそう。
◆「いつかやりたい」の背中を押し、共に行動する力の持ち主

野球観戦が好き。本当は自分たちでも野球をやりたいけれど時間がない。昔からバイクが好き。仲間とツーリングできたら楽しいはず。しかし、考えている状態から行動に移す、その一歩がなかなか踏み出せないのがオトナの事情。聞こえてくる「本当は~したい」そんな言い訳の多いオトナの背中を、実現に向けてそっと後押ししてくれるのが上谷さんです。

八郎右ヱ門に集う常連のお客様が中心となって、青葉区内を中心に20年以上活動している野球チーム「青葉台恋唄」は、大会で何度も優勝履歴のあるチームです。渋いチーム名の由来は、当時流行した「青葉城恋唄」の歌手、さとう宗幸さんに監督が似ていたからだそう。初期はチーム人員が少なく、野球初心者も多かったそうですが、野球が好きそうなお客様に声をかけるなど、上谷さんの人を繋げる力が功を奏し、強豪チームの仲間入りをしています。

現在は30~40代のメンバーを中心に、20~30人で練習を重ねています。中学・高校時代に野球をなさっていた上谷さんですが、「怪我で店のスタッフにも迷惑をかけましたし、もう若いメンバーに任せてあります」と、現在のポジションはもっぱら外野と応援。しかし、練習や試合前後の八郎右ヱ門での集いはチーム結束につながる活力。上谷さんは後方支援監督の役割も兼任、ということですね。

野球チーム「青葉台恋唄」が青葉区大会で優勝した時のもの

ほぼ数カ月に一度のペースで福島復興イベントに参加するため、1200ccの大型オートバイでのツーリングへお店の常連さんといらっしゃることがある上谷さん。震災後、どのような支援をしたらいいのか考えることはあっても、なかなか行動に移せず日にちが経ってしまうもの。仲間と楽しい時間を過ごす、その行き先を復興支援イベントに設定していらっしゃるのです。さらりと話し、「特別なことはしていませんから」といったご様子。多くを語らず、そのさりげない姿勢がとてもカッコいいのです。呑む仲間、同じ趣味の仲間。その楽しい様子が上谷さんのブログで紹介されています。

上谷さんのブログ「86テンチョの人間ウォッチング」
http://ameblo.jp/hachiro1999/entry-11879780560.html
 
◆毎日、気兼ねなく立ち寄れる場所

居酒屋 八郎右ヱ門の店頭は縄暖簾に赤提灯、壁にはおすすめのメニューが貼られています。奇をてらったおしゃれな外装やインテリアはありません。縄暖簾をくぐると、入り口からまっすぐ伸びた通路の右側は12席ほどの長いカウンター。左側に4卓配置された客席のうち、奥の3卓は掘りごたつの設計で、叔父さまが施工してくださったという店内は、すっきりと整えられています。

 

お店の入り口扉よりも高い、上谷さんの身長に合わせて作られたカウンター内の吊り扉が、「高くて僕らには届きにくくて」と笑って話してくださったのは、上谷さんの右腕として勤務する滝澤さん。18時から深夜1時までと長い夜の営業時間も「うちの若い者が頑張ってくれているので」と目尻を下げて話す上谷さんは、嬉しそうに見えました。

上谷さん(左)とスタッフの「タッキー」滝澤さん

壁には「がんばれ!大前元紀!八郎右ヱ門はしらとり台FC出身の大前元紀選手を応援しています」と掲示してあります。清水エスパルスや海外で活躍し、現在は大宮アルディージャ所属の大前元紀選手の写真です。「小さい頃からウチのお店に来てくれていてね」。皆が集う場所が、誰かを応援する場所になる。自然に暖かいエネルギーを生む場所なのでしょうか、女性のグループや常連のお客様が多く、中には20年来ほぼ毎日、1日3回来店するお客様もいらっしゃるとのこと。8割がリピーターのお客様とは、高い信頼度の現れですね。

◆代々受け継がれる屋号の力

上谷さんは新潟県糸魚川市のご出身です。地元で会社員として数年勤務したのち、2~3年だけ東京や横浜で仕事をしてみるつもりで上京、平さんが勤務されていたラーメン店の仕事に就くことになりました。その後独立し、青葉台にお店を構えて23年。今や 青葉台南商店会 の副会長を務める、青葉台地区を支える要人のお一人です。

長期間お店を経営されていると、大変だった時期や困ったことなどありませんでしたか?と伺うと「特に、ありませんねえ。一度しかない人生、まだまだやりたい事がたくさんあるので、そのためにも仕事を頑張らなくては」。穏やかで自然体。優しい笑顔で「これからは、成人した息子と飲むのも楽しみですね」。

昨年末(2016年12月)に大きな火災に見舞われた糸魚川市。ご両親やご親戚にはお怪我はなかったそうですが、「やはり、何かの形で糸魚川の力になれたらと思っています」と上谷さん。お店の屋号、八郎右ヱ門は4代前のお祖父様のお名前。遠く新潟から、ここ青葉台でも受け継がれ、故郷への想いとともに守られています。

串盛り合わせ&モツ煮込み。炭火焼の塩鶏肉とレバーが人気
◆お客様がFacebookページを作って情報を発信

紹介したい日本酒の持ち込みがOKの日本酒会が、ほぼ月に一度、土曜日の夜に八郎右ヱ門で開催されています。未知の美味しい日本酒に出会う機会。そんな日本酒会の様子や、お店の情報は、スタッフの方ではなく、常連のお客様が Facebookページ に書き込み発信しています。「居酒屋八郎右ヱ門にいます。お料理、美味しいですよ」。写真付きの情報がたくさんアップされています。

上谷さんが自信を持って勧める故郷新潟県の地酒と、シンプルに美味しさを追求した料理。そしてお店を共に支える信頼のおけるスタッフ。その迷いのない自然な安定感が常連さんを作っていくのかもしれません。変わらず、迷わず、毎日飲みに行くことができるお店がある幸せ。上谷さんはそんなお店の店主として、どっしりと青葉台にいます。

居酒屋 八郎右ヱ門
http://aobadaiminami.com/hachirouemon.html


(この記事内の数値データ、組織名、役職名、製品・サービス内容等は、取材時の情報です。)

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